高齢化社会では、引き続き高度な専門的医療も必要となりますが、それに加えて全人的医療が強く広く求められます。このため、当院における内科診療体制を「総合診療科」が中心となって、外来・入院治療を行って専門的な治療が必要な場合に臓器専門医が担当するという仕組みへと変更致しました。
治療医学や予防医学を含めて、総合診療科として担うべき疾患は多数ありますが、その中で患者さんから見た頼れる病院として大切な要素の一つは、プライマリーケアがしっかりしている事だと思われます。つまり総合診療科とは、自分の身体の異常がうまく伝えられない患者さんが何かおかしいと感じた際に、多角的に診療を行うことで、いち早くその原因を見出して各臓器専門診療へと安心して次のステップを踏み出していただく窓口であるとともに、安心・安全な医療を提供する病院の一診療科として重要なポジションであると考えています。
当院では、地域包括ケア病棟と緩和ケア病棟が開設しております。この中で中心となるのは、これから増加する高齢者を大事にして行くことです。
高齢者は、1日床上安静をすると筋力は5%衰え、これが10日間続くと元の状態に回復するまでには約4か月を要するとされています。高齢者の元々のADL(日常生活活動)を維持するためには、廃用予防に全力を尽くすべきだと考えています。
また地域の高齢者に限らず、すべての患者さんに対して切れ目なくつながった診療と看護、およびリハビリテーションを提供できるシステムを充実させ、地域において必要とされる病院を目指し、総合診療科の充実を図るべく努力してまいります。
神経内科(物忘れ外来)では、初診時にご本人及びご家族からの病歴聴取、神経診察、神経心理検査、血液検査、頭部MRI検査、脳血流シンチ検査を行い、認知症性疾患の診断をおこなっています。診断後は、治療薬の投薬を開始し、同時に介護保険の申請、デイケアの推奨や認知症ケアに対するアドバイス(患者さんのとの接し方や認知症予防)などを実践しております。また、認知症以外にもパーキンソン病をはじめとした神経変性疾患についても診察、治療をおこなっております。
心療内科で治療を行うのは、いわゆる「心身症」と呼ばれる病気です。心身症は、「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義されています*。
「心理社会的因子」というのは、細かいことでもつい気にしすぎてしまう、いつも人の顔色を見て行動してしまう、などの性格傾向や行動パターン(心理的因子)、あるいは職場や家庭での忙しさ、引っ越しや身近な人との別れといった出来事から生じるストレス(社会的因子)のことを指します。
例えば、仕事が忙しくなるといつも胃が痛くなり、胃薬を飲むだけではなかなか治らない、ということがあります。あるいは、イライラや寂しさが大きくなると、つい食べ過ぎてしまったり、逆に何日も食べずに過ごして体調を崩してしまったり、ということがあります。このような場合には、体のケアに加えて、心のケアも必要になってくるのです。
*「心身医学の新しい治療指針」:心身医学第31巻7号より引用
さらに、地域のご要望に応え、膠原病(関節リュウマチ、全身性エリテマトーデスなど)、呼吸器など専門外来を大学のご協力をいただき開設しています。原則予約制ですので、予約センターへご連絡ください。
心療内科ではからだの症状のうち、その発症や持続に心理社会的な要因が関与していると思われるものの診断・治療を行っています。またこの他にも、当科では当院腎センターと連携し、サイコネフロロジー(腎臓精神医学)にも取り組んでいます。